このページでは塗装に基本について記載しています。
塗装の役割
塗装の役割は大別すると、下記の3つに分けられます。
- 色を塗ることで見栄えを良くする
- 塗膜によって劣化の因子の浸入を防ぐ
- 特殊な塗料により、熱を遮熱して室温を下げる、カビ・菌の発生を防ぐなどの機能を付与する。
2番の「劣化の因子」の主なものは「紫外線」「雨などの水」になり、その他には「排出ガス」「塩分」などがあり、塗装自体もこれらによって劣化していきます。建物の外壁などで塗膜の劣化が進行するとひび割れが発生し、建物の内部に雨水が浸入するようになり、躯体を腐食して建築物の寿命を縮めてしまうため、劣化の進行を発見した時は塗替えなどの補修を検討する必要があります。
塗替えを検討する時期
劣化の進行速度は主に「周辺環境の劣化因子の量」「既存の塗装の耐候性(耐久力)」に左右されるため、一概に何年で塗替えとは言えませんので、劣化の状態を見て検討する必要があります。
周辺環境は降水量、日光を受けやすい面、湿気の溜まりやすい面、塩分を受けやすい海沿いなどがありますが、石川県の気候という点で見ると「降水量が多め」「降雪地域」という特徴があり、塗装をはじめとして建物にはやや厳しい環境であると言えます。
塗装の耐候性(紫外線や雨などに対する強さ)は塗料に含まれる樹脂が大きな要素であり、様々な種類のものがありますが、一般的に上塗りに用いられる樹脂としては「アクリル」「ポリウレタン(ウレタン)」「アクリルシリコン(シリコン)」「ふっ素」があります。
樹脂 | 耐候性の耐用 | その他の特徴 |
---|---|---|
アクリル | 3~6年 | 透湿性(水分が通りやすい)があり、軒天などに適する |
ポリウレタン | 8~12年 | 弾性力があり、木部などの部材の伸び縮みに追従できる |
アクリルシリコン | 12~15年 | コストパフォーマンス面で優れる |
ふっ素 | 15~20年 | 耐候性は高いがコストが高く、高層ビルなど塗替えが難しい場所向け |
塗装の主な劣化現象
白亜化(チョーキング)
塗膜の表面の樹脂が紫外線などで劣化し、粉状になっている。
変退色
塗料の顔料(色の素)が紫外線などで分解され、元々の色より薄くなっている。
膨れ
塗膜の付着力の低下や、内部からの漏水により、塗膜が膨れている状態。さらに進行すると剥がれになる。
剥がれ
塗膜が剥がれている状態で、下地が露出するため劣化が早くなる。
カビ・藻
湿気が多く、日当たり・風通しの悪い箇所の悪い箇所に発生しやすい。塗膜の劣化を促進する。
金属部のサビ
塗膜が劣化したことなどにより、素地である金属部が酸素や水分に触れてサビになっている。放置すると腐食して強度が下がり穴が空いたりする。
木部の劣化
木部が劣化して木が剥がれたり、カビが生えたり、色褪せている。
塗装の工程
塗装の工程は塗装仕様ごとに様々ですが、養生などの下準備を除けば「下地調整」「下塗り」「上塗り」に大別されます。塗装仕様によっては下塗りの後に「主材塗り」「中塗り」の工程が入るものがあります。
下地調整
劣化した塗膜やサビを落としたり高圧洗浄で汚れを落とすなどの「悪い部分を取り除いて塗料の付着を良くする作業」や、パテなどで凹みを埋めて「仕上りの見栄えを良くする作業」があります。
塗装を長持ちさせる上では前者の作業が重要で、下地調整が不十分な場合、素地-旧塗膜で発生した剥離で新しい塗膜ごと剥がれたり、鉄部では残留した大きなサビが塗膜の内部から腐食を進行させるといった事が起こり得ます。
下塗りと上塗り
塗装は異なる特徴を持つ塗料をいくつか組み合わせることで構成されています。
下塗りは下地に浸透したり、乾いた後に粘着力を発揮することで上に重ねる塗膜の密着力を高めることが主な役割で、鉄部の下塗りは錆止めの効果もあります。下塗りは耐候性が良好では無く、上塗りを行うまでの期間が長期になると付着力が落ちてしまうので、上塗りは出来るだけ早期に行うことが望ましいです。
上塗りは耐候性、耐久力など保護機能に優れます。十分な保護機能を発揮するためには、塗料ごとに定められた量を塗布することが大切であり、塗料によっては2回塗るものもあります。
また、下塗りを行わずに上塗りを塗った場合、下地の状態が悪い場所で早期に剥がれを生じたり、下地に塗料が浸透して仕上りの色やツヤにムラが生じることがあります。